MBO・LBOという手法

マネジメントバイアウト、レバレッジドバイアウトについて
それぞれに少々やり方は違うが、たまたま両方経験した(させられた?)ことがある。





社員は、廃人にされるか捨てられる。


こんなことを思ったのは、これらの記事を見て。

大株主から「業績悪化の責任取れ」 すかいらーく社長に退任要求


「解任」すかいらーく横川社長 株売却一族で520億円手にする

MBOで一度株式市場を離れて、再建の道を模索しようとしていたようだったが
短期利益を目論むファンドの意向に沿わず一族は退任させられたというもの。

一族は、MBOを行った時点で勝ち逃げ。
持っていた株を最大の価格で売却することができたのだから。

ファンドは私の目から見たら、机上の空論よろしく数字いじりをしているばかりで何もしていない。

無茶なレールを敷いて、この上で走れと要求する。
理論上は新幹線より速く走ることが可能だと吠える。
(じゃあ、おまえが走ってみろよ、と何度も思った)



株を一手に握っているので、誰も逆らうことはできない。
逆らうことができるとしたら、それは債権を握っている銀行団くらいのもの。



しかし銀行団も債権回収のためには、ファンドが描いた無茶な絵の通りになってもらわなければならない。
事業そのものに対して無担保で貸し付けを行っているようなもので、
当然相当の高金利である上、業績次第で上下し、
業績が悪ければ、金利が増す、という悪循環契約。
(リスクが増大するから早期回収させろという金融機関の理屈)



これだけで倒産する企業も出ている。






さて、現場は、といえば悲惨そのもの。

MBOLBOで株式を高値で回収するのにかかったお金は、
全部株主がさっぱりと現金で払ったわけではない。


借入金や社債に化けて社員達の背中にずっしりとのしかかる。
儲かるのは株主と銀行だけ、社員は置いてきぼりになる。



すかいらーくの場合は社員も一部の株を持っているようだが、
株式数にしても微々たるものと思う。
IPOできればもう働かなくていい、くらいになれる人はごく少数だろう。


詳しい数はわからないが、1600人程度というから、
アルバイトや現場で働く人の大半は関係ない。

けれど、馬車馬のように走れと鞭を入れられ、走れなくなったら捨てられる。
ファンドも銀行団の手前、改善策として「リストラ」を打ち出す。

もうリストラなんてやるところがなくてもやらせる。
すごい肩書のコンサルタントを連れてきては、業務を改善して利益をあげろという。



業務改善しようにも、人を減らされて時間もない、お金も使わせてもらえないのでは
人力で工夫してなんとかしろと要求されても限界がある。


自然と社員のモチベーションも低下していく。
働いても、働いても、還元されるのは本人にではなくて、ファンドと銀行団に、なのだから。
蟻地獄状態が終わってからでないと、頑張った社員達への還元は殆どないだろう。


どうも、この手法で成功している事例を多くみないのは、ファンドの甘い見通しもさることながら
社員のモチベーションの問題が大きいのではと思っている。



比較的成功しているLBO事例に見えるソフトバンクモバイルですら、
EBITDAのマジックにしか見えない。



IRを詳しくみているわけではないのと、
SBモバイル単体は非公開企業であるので憶測の域を出ないが
恐らく小さな事業資産もすべて減価償却資産として繰り延べを行い、
かつSBお得意の証券化で飛ばして処理されているのだと想像する。



そうすればEBITDAの見た目はかなりよくなるはずだ。
しかし2兆円近い借金をどう返済していくのかが見ものである。
(それももちろん社員の双肩にずっしりとのしかかっている)


それでも常に状況を前向きに、よく見せるテクニックには感心させられる。
(禿様大好きです)




私自身が株式投資をやらない理由は、
「人のふんどしで相撲を取りたくない」というちっぽけなものだ。


別にやっている人をどうこう言うつもりはない。
市場があるのだから。



だが株価の上下に一喜一憂することはできない。
短期的に利益を出して、それがそこで働く人にとって幸せなことであれば
もちろんかまわないのだけれど、短期的に利益を出すために溜まった膿が
どこかで一気に吹き出すことだってある。


利益を全部はき出してしまって、中がスカスカになってしまうこともある。
逆さに振っても何もでない、という状態になる。


たとえば、主力商品があり、毎年それによってほぼ同額の利益を確保できているとする。

そこに短期利益を目論む人たちがやってきたら、人員を真っ先に減らす。
そうすれば、同じ売上でも人件費を削った分だけ利益は増大する。
数年間は利益が大きく見える。その間に高値をつけて売り抜けてしまえばよい。

しかしながら、主力商品があっても、いつかは衰退する。
その間に次の主力商品をつくらなければいけないのに、
やれる人材が残っていない、人が足りない、売りに行く人もいない。


吸い尽くした人たちのおかげで中身はからっぽ、という事例を実際にみた。
本当に外殻しか残っていなかった。



抜け殻になった企業に未来はない。